2012年1月17日火曜日

山口洋佑さんの個展「しらないこと」


映画『一年間』(仮)に出演いただいた山口洋佑さんの個展「しらないこと」が、TOKYO CULTUART by BEAMS http://blog.beams.co.jp/cultuart/にて1月25日(水)まで開催中です。13日(金)のオープニングのライブでは、山口さんが参加しているjutomani(ふとまに)に三富栄治さんも加わって会場が小さな惑星みたいにとろけあっていました。展示も音楽も声も全部つながっているんだな、と感じた刺激的な夜でした。山口洋佑さんの絵、そして三富栄治さんの音楽は、映画『一年間』(仮)の中でも使用されています。どのように出てくるのかをどうぞ楽しみにしていて下さい!
連日11:00~20:00まで開催中ですので、お休みの日や仕事帰りに行かれてはいかがでしょうか。もしかしたら、山口洋佑さん本人にもお会いできるかもしれませんよー。
上の写真は、13日(金)のオープニングのライブの様子です。会場は、お客さんでいっぱいでしたね。
向かって左側のニット帽を被っているのが山口洋佑さん、右側のキャップを被っているのが三富栄治さんです。
そして、肝心の映画ですが、現在波田野監督が完成に向けて編集を進めています。楽しみにしていてください!




2012年1月11日水曜日

制作日誌その1/『ジャリー』を観た。

ヶ月に及ぶ撮影の間、持ち込んだプロジェクターを合宿所のリビングの壁に投影し、みんなで映画を観る時間がありました。撮影の参考にというわけではなく、ただ単に好きな映画を息抜きとして観ていました。でもひとつだけ制作の為に持ち込んだ映画があります。トリュフォーの『アメリカの夜』。映画撮影の裏側を、愛情いっぱいに描いたこの映画をスタッフ全員で観て、「こんなにも映画制作って面白いんだ。だから明日からの過酷な一ヶ月をみんなで楽しく乗り切ろう!」という士気高揚の為に用意したのですが、あまりにも撮影準備が忙しく、映画を観ている暇などありませんでした。結局この映画を観ることはなく、撮影は終了してしまった。

役者さんとシガーロスのドキュメンタリー『ヘイマ』を観て、アイスランドの自然の雄大さに恐れを抱き、「うんうん、彼らの音楽はこの土地から生まれた音楽だね」と納得したり。スタッフとはガス・ヴァン・サントの『ジェリー』を観ました。誰もが面白いというような映画ではないので、どんな反応をするんだろうと少し心配だったけど、意外にもみんな楽しんでくれていた。「暇で暇でしょうがないときに、無性にまた観たくなる。」と、そんなことを言っていた鳥取大学映画研究会のメンバーが『ジャリー』という映画を作りました。

ひと言で言ってしまうと『ジェリー』のパクリです。というかそのまんまコピー商品。
でもこの映画を観て、僕はすごく感動してしまいました。
高校の頃、音楽がしたくてパールジャムのコピーバンドを友達と組みました。同じく高校の頃、バスキアの映画を観てたくさん真似て絵を描きました。そういったことを思い出し、そのときの気持ちを思い出しました。こういうことは思い出すだけで恥ずかしくなることなので、なるべく忘れようとしてしまいます。でも、と『ジャリー』を観て感じました。
画家はたくさん模写を描くし、音楽家も昔の作曲家の楽譜を一生懸命練習する。だとしたら、いいなと思った映画と同じ映画を作ってみよう、という気持ちはごく普通のことなのかもしれません。作ることで学べることは、観るだけよりたくさんあります。何よりその「じゃあ、やってみよう。」という素直な気持ちは忘れようとしてはいけない、と気づかされ、心を打たれました。

この温情のような感情は、多分に、彼らが僕の友達で、個人的に知っているから湧いた感情だとも思います。いや、ほんといいやつらなのです。
ただいくらコピーといっても、完全にコピーできるはずはなく、その本物とのずれこそが大事な部分だと思います。
『ジャリー』にも『ジェリー』にはない部分がいろいろあって、例えば砂丘のふちを男が歩いた後ろから、砂が雪崩のように崩れていって、その頭上を鳥が飛んでゆくところ。吹雪の中でひとりの男が「車があって、スープもあって、帰る道も僕は知ってる。そういうことを君に言える僕でいたかった。」と告げたあと、もう片方の男がただ「いくよ。」とそっけなく言うところ。これはこの映画にしかないシーンだし、胸を打つ素晴らしいシーンだと思います。こういうことを繰り返し、ずれの部分を知っていくことは、自分の資質を知っていくことにつながっているように思います。

ある作品から受けた感動を、作品を作ることで次へと渡していく。その反射がどんどん広がっていくこと。僕が一番感動したのはその部分かもしれません。どうか鳥大映研のこれからを温かく見守っていてください。鳥大映研のみんなはもっともっと精進してください。そして僕もこの感動を、自分の作品を作ることで次へと反射させていきたいです。もちろんただいま編集中ですので、ご心配なく。

蛇足ですが、タイトルの『ジャリー』は砂がたくさん口に入ったからなのかな。

文/波田野州平